川内原発のパブリックコメントで安全神話が復活しているんだが

川内原発の審査書を原子力規制委員会で了承された。また同時に審査書案へのパブリックコメントへの回答が一部ながらだされた。いろいろと問題点の多い回答があるのだが、特に気になった点があったのでここに書いておく。
内容は下記に引用したが、パブリックコメントの事故確立に関しての質問に対して、原子力規制委員会は事故頻度が100万炉年に一回を目標にして審査しているので安全であると回答している。

九州電力株式会社川内原子力発電所1 号炉及び2 号炉の審査書案に対する意見募集の結果等及び発電用原子炉設置変更許可について(案)
意見
原発のリスクがどの程度残ったかについて、規制委員会はリスク評価文書をつくり至急公表していただきたい。我々が知りたいのは規制強化によってどの程度リスクが減り、原発の安全性が今後どの程度保証されるのかについての委員会の判断である。
・Cs-137 の放出量が100TBqを下回っていることを確認とあるが、実際にはこれを超える残余のリスクがあることを明示すべき。

回答
原子力規制委員会では、事故による大量の放射性物質の放出頻度を安全目標として、セシウム137の放出量が100TBqを超えるような事故発生頻度が「100万炉年に1回」程度を超えないように抑制されるべきと言う目標を設定しています。これは規制基準として直接的に用いられるものではありませんが、新規制基準を満たした原子炉については、この安全目標についても概ね達成できるものと考えています。川内原子力発電所については、様々な重大事故を想定した上で、最も厳しいケースにおいては、放出される放射性物質のうちセシウム137の放出量は約5.6TBq(※7日間の数値)になると評価されています。これを上回る事故が発生することや、想定通りの事故対応が出来ないこともあり得ますが、新規制基準を踏まえて準備した様々な対応により、その可能性は相当程度低く抑えられるものと考えています。

しかし震災前の評価でも同様に100万炉年に一度の事故頻度であるといっていた*1。これではなにがどう原子力着せ委員会になって変わったのだろうか。

http://www.enup2.jp/newpage38.html
原子力システムニュースVol.15,No.4(2005.3)に掲載)

3.原子炉事故の頻度を考慮

自動車事故は毎年発生しているが、炉心損傷事故は生涯の80年間に一度も起こらないと考えてよい。

事実わが国では約1,000炉・年(各原子炉の運転年数を全原子力発電所について加算した総和)の運転実績があるが、大量の核分裂生成物を放出するような炉心損傷事故は一度も起こしていない。このことは一基(炉)の原子力発電所に換算すると、1,000年間も炉心損傷事故を起こしていないことを意味する。

一方、確率論的リスク評価手法を用いて、わが国の原子力発電所における配管破断、機器故障の実績および人間の作業ミスなどの実情を基にして炉心損傷頻度を評価している。そして炉心損傷事故の頻度は炉・年あたり1×10−7以下と評価されている。

(略)

4.終わりに

以上の話は、読者の皆さんが始めて聞くことかもしれないが、これは客観的事実である。

実際の事故頻度の実績が約500炉年に一度*2である。工学においては現場、現物、現実が最も重要でいかにきれいな数式ができようがそれを反映しない限り何も意味がない。原子力規制委員会が行っていることは現実をみてないのではないだろうか。
私には再び安全神話へ回帰使用としてるようにしか見えない。

*1:1*10^-7=100万炉年に一度の頻度

*2:日本の実績事故頻度

絶滅危惧種うなぎを食べて応援 by NHK

うなぎが去年の環境省による絶滅危惧種指定に続き、IUCNでも絶滅危惧種として指定された*1

そのことで、今日のNHKの9時のニュースでうなぎが絶滅危惧種に指定されたことを報道していたのだが、ものすごい報道の仕方をしていたので紹介する。

わざわざウナギをアナウンサーが食っているところを写した上で、うなぎの資源保護の為に食べないというはだめだ。むしろ食べて応援すべきという報道がなされていた。

狂気を感じるね。

ちなみにそういう運動やっているところとして取り上げられていたのは、パルシステム生活協同組合連合会のうなぎ1パックにつき10円寄付というもの。

パルシステム生活協同組合連合会のプレスリリース】

いやそりゃ牛丼屋でファーストフードとして消費されるだけよりかはなんぼかましだろうけど・・・

【参考記事】
ウナギに関する日本メディアの報道 - 勝川俊雄公式サイト
ウナギを食べ続けたいなら、ワシントン条約を歓迎すべきである - 勝川俊雄公式サイト

やったね、食べて応援の仲間が増えたよ!

(2014/06/23追記)
ニホンウナギが絶滅危惧種に指定!?私たちの食卓に影響は? | クックパッドニュース
「せっかくとれたウナギなので、おいしく食べていただきたい」By 水産庁

「せっかく買ったウナギの蒲焼き。余すところなくしっかりおいしく食べたいですね。」 By クックパッド


もしかしてNHKのも水産庁のお仕事の結果なんですかね…

井戸川・雁屋を批判する為に政府・電力会社の糞っぷりを擁護するのは醜悪としか言えない

美味しんぼの鼻血問題が話題になっているが、その漫画の中で発言が出てくる井戸川氏を批判する為*1に、政府や東電をはじめとする電力会社による地震の評価をゆがめた行いを擁護する人がいるようだ。

山本弘のSF秘密基地BLOG:続・鼻血効果

もう一人、『美味しんぼ』に登場する前双葉町町長の井戸川克隆氏について。どんな人なのかと検索してみたら、こんなことを言ってるのを見つけた。 2013年7月16日の街頭演説だそうだ。(3分45秒あたりから)

https://www.youtube.com/watch?v=kNGH17igez8

>あのー、今日はもうひとつ、とんでもないことを喋らせていただきます。2011年津波のあった年の3月3日、3月3日に、地震津波のあることを日本政府は知ってました。知ってたんですよ。8日前に、地震津波の8日前に知ってました。しかし、それを止めたのは、政府と東京電力東北電力と日本原電が発表を止めてしまったんです。こんなことって許されますか、みなさん。

 何と、政府は3月11日に地震が来ることを知っていたというのだ!
 はて、その話のソースはどこだ……と思って検索してみたら、こんなのが見つかった。2012年2月25日の記事である。

電力会社求め巨大津波警戒を修正 地震調査報告書で文科省
http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012022501001655.html

> 東日本大震災の8日前、宮城―福島沖での巨大津波の危険を指摘する報告書を作成中だった政府の地震調査委員会事務局(文部科学省)が、東京電力など原発を持つ3社と非公式会合を開催、電力会社が巨大津波地震への警戒を促す表現を変えるよう求め、事務局が「工夫する」と修正を受け入れていたことが、25日までの情報公開請求などで分かった。
> 報告書の修正案は昨年3月11日の震災の影響で公表されていない。調査委の委員を務める研究者らも知らされておらず「信じられない」などの声が出ている。電力会社との「擦り合わせ」とも取られかねず、文科省の姿勢が問われそうだ。

 どう見ても、政府が3月11日に地震が来ることを知っていたという内容ではない。いつ来るか分からない地震による津波の危険を指摘する報告書を作成中、電力会社から表現を変えるよう求められたために、修正したうえで発表しようとしていたら、震災が起きたもので発表できなくなった……ということだ。
 これが井戸川氏の頭の中では、地震津波のあることを日本政府は知ってました」「政府と東京電力東北電力と日本原電が発表を止めてしまった」ということになるらしい。

 僕はほんの数分、検索しただけで、こういうことが分かったというに、なぜ『スピリッツ』編集部は気づかなかったのだろうか? 不思議だ。

ほんの数分では私には無理だったが、ちょっと小一時間ほど調べればもっと詳細な報道がでてくる。
下記に引用した記事*2を見て貰えれば分かるように、「いつ来るかわからない地震」や電力会社より求められたのが「表現を変えるよう求められたため」なんてかわいいものではない。東北地方の巨大津波について「いつ起きてもおかしくはない」という表現で書かれていたものが、差し止められたうえ、最終的に貞観地震について周期性は無いにまで書き換えられて発表されるところだった。
電力会社の介在によって原発のために、地震についてのリスク評価が歪ませられる事は、山本氏にとっては井戸川氏、雁屋氏を批判することよりどうでもいいことのようだ。
しかし、この政府・電力会社の屑っぷりをどうして擁護できようか、そのことを批判している井戸川氏をどうしてあげつらう事ができようか、醜悪としか言えない。

巨大津波警戒の報告書修正 電力会社の注文受け文科省*3

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201202260070.html

東日本大震災の8日前、宮城―福島沖での巨大津波の危険を指摘する報告書を作成中だった政府の地震調査委員会事務局(文部科学省)が、東京電力など原発を持つ3社と非公式会合を開催、電力会社が巨大津波地震への警戒を促す表現を変えるよう求め、事務局が「工夫する」と修正を受け入れていたことが、25日までの情報公開請求などで分かった。

報告書の修正案は昨年3月11日の震災の影響で公表されていない。調査委の委員を務める研究者らも知らされておらず「信じられない」などの声が出ている。電力会社との「擦り合わせ」とも取られかねず、文科省の姿勢が問われそうだ。

文科省は「誤解を招かないよう表現を修正した」などと説明。東電は「文科省から情報交換したいとの要請があった。(修正を求めたのは)正確に記載してほしいとの趣旨だった」としている。

作成中だった報告書は、宮城県などを襲った貞観地震津波(869年)の新知見を反映させた地震の「長期評価」。貞観地震と同規模の地震が繰り返し起きる可能性があると指摘されていた。

開示された資料や取材によると、会合は「情報交換会」と呼ばれ、昨年3月3日午前10時から正午まで省内の会議室で開催。青森、宮城、福島、茨城各県に原発を持つ東電、東北電力日本原子力発電から計9人が出席した。

巨大津波への警戒を促す記述について、東電などは「貞観地震が繰り返していると誤解されないようにしてほしい」と要求。文科省は「内容は変えないが、誤解を生じにくいよう文章を工夫したい」と応じ、数日後には「繰り返し発生しているかは適切なデータが十分でないため、さらなる調査研究が必要」などとする修正案を作成した。

電力会社側はさらに活断層評価に関する意見交換会も要求。昨年3月末に会合が予定されたが、結局開かれなかった。

政府の東京電力福島第1原発事故調査・検証委員会によると、東電は昨年3月7日、経済産業省原子力安全・保安院に「貞観地震の記述を変更するよう文科省に求めた」と報告している。

「いつ起きても」を削除 巨大津波の記述、文科省*4
中国新聞 2012年2月28日
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201202280113.html

 東日本大震災直前の昨年2月、政府の地震調査委員会(文部科学省)が東北地方の巨大津波について、報告書に「いつ起きてもおかしくはない」と警戒する記述を盛り込むことを検討しながら、委員の議論を受けて削除していたことが、28日までの文部科学省への情報公開請求などで分かった。「切迫度のより高い東海地震と同じ表現を使うのは不適切」との理由だった。
 報告書案は震災8日前、文科省東京電力など3社との非公式会合に提示。電力会社の要求でさらに表現を弱めた修正案がつくられたが、結局公表されなかった。
 委員は大学の研究者を中心に気象庁などの専門家ら計十数人。報告書は、三陸沖―房総沖の地震の発生確率などを求める「長期評価」の見直しの一環で作成していた。
 開示資料と取材によると、報告書案では「宮城県沖から福島県沖にかけて」という項目を新設。両県の太平洋沿岸の地中で、過去2500年間に貞観地震(869年、マグニチュード推定8・3)など計4回、巨大津波が来たことを示す堆積物が見つかったとの研究結果に基づき「(周期から)巨大津波を伴う地震がいつ発生してもおかしくはない」と記述した。
 だが、この文言が東海地震と結び付けて考えられる可能性があるなどとの指摘が出た。30年以内の発生確率が87%(現在は88%)だった東海地震と比べ、貞観地震などの再来にはそこまでの切迫性はないとして「発生する可能性があることに留意する必要がある」と弱められた。
 当初あった「巨大津波による堆積物が約450〜800年程度の間隔で堆積」「前回から既に500年経過」などの表現も削除された。
 東日本大震災について、地震調査委は昨年3月11日時点にさかのぼって発生確率を推定。「30年以内で10〜20%」だったとしている。

http://www.47news.jp/CN/201202/CN2012022801001129.html*5


 東日本大震災直前の昨年2月、政府の地震調査委員会(文部科学省)が東北地方の巨大津波について、報告書に「いつ起きてもおかしくはない」と警戒する記述を盛り込むことを検討しながら、委員の議論を受けて削除していたことが、28日までの文部科学省への情報公開請求などで分かった。「切迫度のより高い東海地震と同じ表現を使うのは不適切」との理由だった。

 報告書案は震災8日前、文科省東京電力など3社との非公式会合に提示。電力会社の要求でさらに表現を弱めた修正案がつくられたが、結局公表されなかった。


しかし、歴史にもしは無いのだけれど、この報告書が当初の「いつ起きてもおかしくはない」という表現で東日本大震災前に発表されていれば、いくばくかの人が救えたのではないかと思うと残念でならない。

*1:ひどい所だと陰謀論者扱いまでされているらしい。参考:井戸川克隆元双葉町町長の演説は、陰謀論や予言説とは異なる - 法華狼の日記

*2:一部元の記事が削除されているため、転載しているブログより孫引き。魚拓等あればお教え頂きたい。

*3:文科省の「巨大津波の可能性」報告書を、東電が変更させていた。 | 【エネこみ】 energy-shift community & commitmentより

*4:http://blogs.yahoo.co.jp/lunarainbow111111/3587584.htmlより

*5:今新聞社のサイトに残っているものとしてはこちらが一番詳細なものの模様。

日本においても太陽光発電がグリッドパリティを達成した模様

調達価格等算定員会の検討の結果、2014年度の日本の太陽光発電の固定価格買取価格は住宅用が10年間・37円/kWh、非住宅用が20年間・32円/kWhとなった。
この価格自体は事業者の利益を含む為、発電原価ではない。しかし発電原価がいくらになったのかについては、残念ながら報道が特にないので、調達価格等算定委員会で提示された数値を元に試算をしてみた。試算には前回の記事同様、コスト検証委員会の発電コスト試算シートを使用している。
その試算の結果、日本においても太陽光発電の発電原価が25円/kWhと、家庭用電力料金と同等の金額となることがわかった。より具体的には調達価格等算定委員会の資料から建設費、運転維持費を取り出して、発電コスト試算シートを使って試算をしている。その結果、10kW以下の新築の場合で家庭用力並みの25円/kWh。既設の場合は27.7円/kWhとなった。東京電力の場合、電気料金は第2段階までで1kWh当たり25円19銭、第3段階で29円10銭となっており、既設でも新築でも、第一段階のグリッドパリティが達成されていると言っていいだろう。
なお、10kW以上の非住宅用太陽光発電(メガソーラー)については、試算した結果は23.5円/kWhとなっている。

今回の試算結果とコスト等検証委員会の2010年、2030年の太陽光発電のコストを表にまとめてみる。

  2010 2013 2030
住宅用 33.4〜38.3 25.0〜27.7 9.9〜20.0
メガソーラー 30.1〜45.8 23.5 12.1〜26.4

住宅用にしろメガソーラーにしろ、発電原価がわずか3年余りで3割ほどと大幅に下がっているのが良くわかるだろう。このままの現状の年間1割程度のペースで下がっていけば、日本で太陽光発電が高いと言えるのは精々あと数年程度となるだろう。
具体的な数字で比較すると、現状においても石油火力(24円/kWh)とさほど変わらない。今後の発電原価下落ペースしだいだが、このペースのまま推移するなら遅くとも2020年前後には業務用電力価格(16円/kWh)やガス火力(13円/kWh)に対しても価格競争力をつけてくるのではないだろうか。2013年時点で火力の発電原価と同等のものが出てきているアメリカやドイツほどではないにしろ、日本においても火力の発電原価と太陽光発電の発電原価が変わらなくなるところが見えるところまで来ている。

参考
http://www.meti.go.jp/press/2013/03/20140325002/20140325002.html
国家戦略室 - 政策 - 発電コスト試算シート
特に注釈のないものの発電原価はこちらから取っている。
調達価格等算定委員会資料:最近の太陽光発電市場の動向及び前回のご指摘事項について

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【原発こそ技術的にオワコン】新設原発終了のお知らせがアメリカからやってきた件

よく原発推進派は「安全な原発を新設して安価な電力を供給すればよく、そうすればこれからも原発を推進していける」といった発言をしているが、アメリカのコスト事例を見れば、それは寝言であることがよくわかる。

米政権、ボーグル原発新設向け融資合意を発表へ=関係筋
数少ない原子炉新設計画のうち、連邦政府の融資保証を受けられるのはこれまでのところボーグル原発のみとなっている。

2基の原子炉新設プロジェクトでは、東芝傘下である米ウェスチングハウスの新型加圧水型軽水炉「AP1000」(出力110万キロワット)が採用される。コストは140億ドル超と見込まれており、ジョージア・パワーがコンソーシアムを率いている。

2基の建設費が140億ドル超で計算すると、建設費は1ドル102円として65万円/kW超となる。
これをコスト検証委員会の発電コスト試算シート*1に当てはめると13.4円/kWhLNG火力(12.4円/kWh)や石炭火力(10.7円/kWh)よりずっと高い発電単価となる*2
安全を追及していない日本の格安原発(建設費35万円/kW)ならば、8.9円/kWhと火力に対して価格競争力があるだろうが、安全を追及している欧米の原発だと、とてもじゃないが安いと言える現状ではないようだ。
欧米で原発のコストが高騰しているのを見て見ぬ振りをして、原発が安いと連呼しているのはこっけいだが、それで原発を推進されてしまってはたまらない。

*1:国家戦略室 - 政策 - 発電コスト試算シート

*2:ちなみに同コスト検証での地熱の発電コストは9.6〜11.6円とされている。地熱はオワコンといっている人がいたようだがこういったことはみえないのだろうな。参考:地熱の中の人曰く - アナログとデジタルの狭間で,地熱発電は詰んだ技術 - Togetter

地熱の中の人曰く


地熱発電は技術的にオワコンといっている人もいるようだが*1、地熱の中の人(地熱開発事業者)は適切なFIT(固定買取価格制度)が整備されれば、十分にやっていけると考えているようだ。
資本費償却後のランニングコストはすごく安い。
地熱発電は初期費用こそかかるものの償却後は石炭火力の燃料費よりも安い金額で運転できると中の人は見込んでいる。

16年目には、資本費部分が非常に大きいものですからランニングコストは小さくて、2.9円/kWh程度になります。このときに市場価格に任せた場合に、例えば仮に15円/kWhと置いたときには十分な利益が出ますが、これが出力を維持するための追加投資、または新規プロジェクトへの投資の原資になるという考え方です。

規模でコストが大きく違う。

図を見ればわかるように、規模メリットは大きいようなので国立公園内等の地熱資源の豊富な場所の開発が進めば*2、現状の技術でも十分安く開発できるようになるかもしれない。

現存する17カ所、20ユニット、54万kWの地熱発電は、大きいもので6万5000kWから100kWまで規模が大きく異なっていて、スケールメリットによる経済性が甚だしく異なります。従って、規模に乗じた固定買取価格の設定を希望しております。
私どもとしては1万kWと3万kWと5万kWを標準にしまして、グラフを描いております。このグラフで赤い線がy=80.655x-0.3329というべき乗の式で表したものです。私どもとしては、出力に乗じた価格を決めていただきたいということで、このべき乗関数の変数としたらどうかということで、左側に書いていますが1万kWの場合は37円/kWh。38円/kWhで計算したのですが、べき乗関数に入れると37円/kWhになります。

例え現行技術のまま技術開発が進まないとしても、原発の代わりとして一部なりとも地熱発電に変えることはできるだろう。風力・太陽光発電・小水力・バイオマス等とうまく組み合わせて原発分程度は10年程度で代替できるのではないだろうか*3。ちなみに太陽光発電は今年中に日本の総電力量の1%程度をまかなえそうである。

なお、図の引用は地熱発電の買取価格についての要望から、文章の引用は第3 回 調達価格等算定委員会議事録から行った。

*1:例えば地熱発電は詰んだ技術 - Togetter

*2:すぐ自然破壊ガーという反応が来るかもしれないが、原発も国立公園内での大規模開発が行われている。どちらが自然環境を破壊するのだろう?

*3:その間は火力発電が代替するだろう

電力消費者に回される月200円の請求書は原発3.5基分を代替する。

http://agora-web.jp/archives/1561679.html

この記事には結構重大な誤りがある。まず原発の発電能力の過大評価がある。原発1基100万kWが1年間の稼働率(設備利用率)は震災前で約65%ほどで、年間の発電量は57億kW*1となり、太陽光発電の発電量は194億kWh*2なので代替する電力量は原発3.5基分*3となる*4

次に話の重点である、賦課金についても誤りがある。このままでは20年で2013年5月現在の設備認定容量1937万kWだと、その買取総額は20年間で16兆2156億円となる。それは間違いではない。しかし、実際に課せられる賦課金は買取総額から回避可能費用*5を引いたものになるので、その額がそのまま請求されるわけではない。その回避可能費用は計算すると3兆8740億円となるので*6、実際に電力消費者に回される請求書の金額は20年間で12兆3389億円となる。

もちろん20年間だと12兆3389億円というのは、たしかに十分大きい金額だ。それが1世帯あたりの電気料金となると一体いくらかかるかを試算してみた。まず年間の賦課金は6169億円となる。これを国内の総消費電力量9000億kWhで割ることにより、1kWhあたりの金額を計算すると0.685円/kWhとなる。標準世帯だと一般的に月々約300kWhの消費という話なのでこれをかけると300kWh*0.685円/kWh=約200円となる。つまり、1世帯あたり月々たった200円、缶ジュース2本にもならない金額で原発3基分の再生可能エネルギーでできた電力を得ることができたということになる。
今後買取価格が下がっていくことも考えるとそれで経済が立ち行かなくなるほどの電力料金が高騰することも、ドイツ並み*7になることも、考えにくいだろう。


以下参考
ちなみにこちらに最新の2013年6月までの設備認定容量と運転開始した設備容量がでている。再生可能エネルギー発電設備の導入状況(平成25 年6 月末時点)

*1:100万kW*24時間*365日*0.65=56.9億kWh

*2:1937万kW*1000kWh/kW=193.7奥kWh

*3:194億kWh/57億kWh=3.4

*4:さらに言えば記事で使っている太陽光発電の設備容量2150万kWを計算に使用するならば、その場合の電力量は3.77≒約原発4基分と言える。

*5:ようは太陽光発電が供給した結果、その分不要になった燃料費のこと

*6:回避可能原価を10円として、1937万kW*1000kWh/kW*20年*10円/kWh=3兆8740億円 となる。

*7:2013年時点で月1世帯あたり1500円ほど、10年前からFITを導入している分かかる費用がでかくなってしまっている