北海道 電力ブラックアウトの雑な試算

2019年9月6日に北海道で地震に伴う日本で初めてのブラックアウトが起こってから 2週間ようやくその詳細を検討する委員会が結成され、21日から検討を開始するとのこと。素人が今更検討する必要はないのだが、前からちょこちょこ電力需給を検討していたのでせっかくなので専門家が検討するまえに試算してみた。
平成30年北海道胆振東部地震に伴う大規模停電に関する検証委員会の設置及び委員の選定について|報道発表資料|電力広域的運営推進機関ホームページ
こちらの資料3と読売の記事ブラックアウト、10基超の水力発電一斉停止を読むと発電所の稼働状況が見えてきたの試算してみた。
他に使った公開情報は下記2点。
北海道エリアのでんき予報の過去の電力使用状況データ
系統情報サービス | 電力広域的運営推進機関ホームページの系統情報サービスの北本連携線の潮流実績
資料3と読売の記事から前提としては当日稼働していたのは苫東厚真1,2,3、知内1、伊達2、奈井江1の火力発電所6基と水力10基。
この構成の場合、苫東厚真1,2,3、奈井江1、水力10基がベース電源、知内1、伊達2の石油火力発電所がミドル電源として電力需給の調整を行っていたものと思われる。これでミドル電源が変動するよう試算した結果は一番下の図の通りとなる。電力実績と北本の潮流は実績値、他は推定値となる

試算してみて思った疑問点の一つ目は平成30年北海道胆振東部地震に伴う大規模停電に関する検証委員会の資料3には3:11から3:18にかけて周波数悪化と火力による回復が記載されているが、その間の実際の需給の変動は3:10から3:15に5万kW上がって、3:20には12万kW下がっているので、説明と動きがあっていないように見える。
二つ目は試算上では逆に知内1、伊達2のミドル電源の石油火力が3:10から3:20にかけて逆に絞られてしまっていて、北本からの融通電力だよりになる形になっているように見える。
三つ目は読売の報道が正しいとすれば、苫東厚真2,3と水力10基合計170万kWの脱落に一旦は耐えられたのは北海道電力が褒められるべきところなのになぜもうちょっと報道に出てこないだろうか。また、北本からの融通のおかげだという報道もあるが、知内1、伊達2も融通電力の半分相当を担っているはず(試算だと50%出力から100%出力まで増)でそちらも報道がでてこない。

試算からは瞬動予備力(GF)となる北本からの融通電力をデッドロックし、まず石油火力出力を下げて上げ代を確保。本来揚水等が起動し、融通電力を開放すべきところ起動せず*1そうこうするうちに苫東厚真1が脱落し、瞬動予備力(GF)不足からの系統崩壊・ブラックアウトにつながったとみられる。揚水やその他火力などで北本からの融通電力の後追い肩代わりできればブラックアウトは避けれそうにも見える。
たらればを言えば、北本からの融通電力が最大90万kWになるのが間に合う。奈井江1の代わりに 石狩湾新港発電所1号機がミドル電源として稼働している。京極揚水が2基とも停止していないなど1点でも改善していればブラックアウトが避けれたのではといいたくなる。
ちなみに、泊原発が動いていた場合は苫東厚真が石油火力1基とともにミドル電源として動いている蓋然性が高い。その場合ミドル電源が石油火力1基となり調整力が不足するためブラックアウトを避けれたとは簡単に言えそうにない。

*1:京極が2基とも停止中だったのは残念だけれど、他の混合揚水が起動しなかったのはなぜだろう