夏の電力に余裕がある理由の一つはやっぱり太陽光発電にありそうな件

下記の朝日の記事を信じたくない人たちでブクマがいっぱいなので突っ込んでおく。
長々と記事を読みたくない人向けに先に結論だけ書くと、政府・電力会社の下記の電力需給予測の時点で太陽光発電は最大電力供給力の3%ほどを担うという見込みだった*1。この予測はひどく慎重な予測なので、去年の実績から類推した場合、今年の夏の実績は最大電力供給力の6%ほどを担っていると考えられる。太陽光発電が全く無ければ、節電が呼び掛けられる程度には電力が逼迫していた可能性が非常に高かった。

http://digital.asahi.com/articles/ASH875HWYH87ULFA01Y.html?_requesturl=articles/ASH875HWYH87ULFA01Y.html
東京都心で7日、最高気温35度以上の「猛暑日」が過去最長の8日連続となるなど、各地で記録的な猛暑が続くなかで、大手電力各社は比較的余裕のある電力供給を続けている。すべての原発は止まったままだが、太陽光発電の普及や節電の定着で、真夏の電力不足の心配は遠のいている
 電力供給にどれだけ余裕があるかは、その日の電気の供給力と、一日で最も電力の需要が多いピーク時を比べた「最大電力使用率」でわかる。東京電力関西電力の場合、これが90%以上だと電力の余裕が「やや厳しい」、95%以上だと「厳しい」とされる。100%に近づくと、必要な電力に供給が追いつかず、停電の恐れがでてくる。
(略)
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)のもと、太陽光発電の導入量がこの5年間で10倍近くに急増。晴れた日に発電量が多くなる太陽光が夏のピークに対応し、電力供給の安定につながっている。

 一方で、夏のピーク時の電力需要も、震災前と比べて十数%ほど少ない。LED照明への切り替えなど、企業や家庭で節電の取り組みが広がっているためだ。

というわけで以下詳細。
2015夏季電力需給検証小委員会報告書
まず電力需給検証小委員会から出されている報告を見ると、政府・電力会社の予測としては最大電力需要が16260万kW、それに対し最大供給力が17334万kW、電力予備率が6.6%という予測だった。

では実績はどうだったか。
電力広域的運営推進機関(OCCTO)が公表している*2データによると、最大電力需要が8月6日で16200万kW、最大供給力が18140万kW、電力予備率は10%以上を保つ状態となっている。

最大電力需要はほぼ予測通りだが、それに対して最大供給力が806万kW増えている。火力発電が何基か故障しているものもある中で*3最大供給力が増えている一要因は太陽光発電にある。

太陽光発電の供給力は政府の予測では510万kWとなっており、最大電力供給力の約3%とされていた*4。この予測は慎重に見積もった数字で、去年はなんと2倍以上過小に見積もっていた*5。その去年の実績から判断すると1100万kWを太陽光発電*6が発電した可能性が高い。この数字は最大電力供給力の6%にも登り、太陽光発電が無ければ電力の余裕が95%以上となり、上記記事にある電力会社基準の「厳しい」になっていた可能性が高い。

*1:id:ottyankoさんにスターがいっぱい集まっているようだけれど、予測の時点で全体量の1%を超えているんだけど、現実を見たくない人が多すぎだろう

*2:https://www3.occto.or.jp/User/より、最大電力需要実績が「需要実績」より、最大供給力が「需要予想、供給力予報」より拾った

*3:例えば、東電の火力発電所がトラブルで停止 受給に支障はなし :日本経済新聞

*4:510万kW/17334万kW=2.9%

*5:去年の太陽光発電の供給力見積もりが268万kWに対して、実績は633万kW。差は実に2.3倍という差がある。

*6:今年の太陽光発電の導入予測量と去年の実の各地域の出力比率を掛け計算