ベント弁の設計がおかしい件

ようやくベントについてよくまとまっている記事*1を見つけられた。その中でもベント時に弁が動かないという話が気になっていたので該当部分を引用する。

ベント遅れはあったのか?(PDF注意)
ベントには、もう一つ条件があります。それは、ベントは原発の外に放射能災害を引き起こすので、ラプチャーディスクの万一の誤作動を考え、常時閉の隔離弁を設置するよう定められているため、この弁を開けなければならない、ということです。


もう一方はMO弁(電動弁)なので、全館停電している環境では、仮に格納容器圧力が5.5 気圧以上でも、ベントするためには、このMO 弁を現場で開けなければならない、という状況だった訳です。

「発電用軽水型原子炉施設におけるシビアアクシデント対策としてのアクシデントマネージメントについて」原子力安全委員会決定、平成四年五月二八日
格納容器ベント設備は、格納容器の過圧破損を防ぎ、その健全性を維持するための設備である。
設備の故障、誤動作または運転員の誤操作が安全性をかえって阻害する可能性については、各国とも通常時閉止の隔離弁を2弁設置するか又はラプチャーディスクあるいはこれらの組み合わせにより対応している。

(太字は引用者による)

これ読む限りでは設計がおかしい。通常こういった弁の設計時は通常時どうあれば安全かということと共に電源が落ちたときに弁が開いていた方が安全か閉まっていた方が安全かを考えて弁や制御回路の設計を行う。
そして、なんらかの信号が入らない限り通常時閉止であり、かつ電源が落ちたときつまり今回の事態のようなシビアアクシデント時は炉を守るために弁開となるような設計がなされているべきである*2
上で引用したシビアアクシデント対策の指針では通常時閉止の隔離弁を設置するよう求めているが、電源が落ちた場合の動作については言及がない。斑目委員長が全電源停止状態を十分考慮していなかったということを言っていたが、ベントについても電源が完全に落ちることを考慮してなかったのだろう。この点で原子力安全委員会の責任は重い*3
また、設計・施工・運用を行っていたプラントメーカ(GEや東芝・日立)と東電の責任も重い。


ちなみに太字で強調したけれど、このメモの作者はそこらへんの理解が*4おかしいと思う。後消防ポンプで給水作業をしていたが、それが炉の圧力の為難航していたことをなかったことにしたりとか。

*1:吉岡メモといって今回の原発事故についていろいろ書いていて結構有名らしい

*2:スリーマイル事故や住民の避難などを考えるとこの設計は問題だらけだが

*3:というか腹切れよという気分

*4:通常時閉止と常時閉では動作がぜんぜん違う