簡単な火力発電所の話:デマというか誤解について

この話は火力発電所の中でも汽力発電所についての話です。汽力発電所というのはいわゆる蒸気機関のことで、ボイラーで火を焚いて作った蒸気でタービンを回して発電すると言う仕組みになっています。日本の電力会社の火力発電所や自家発電所のだいたいがこの汽力発電所になります。
今回の震災による計画停電や夏場の電力の話題に伴い、火力発電所にも注目が集まっていますが、ネット上において連続運転なんて危ないとか、需要に合せて負荷を変動させるなんて危ないとか、定格で常時運転なんて危ない等色々言われています。*1
これはデマというか誤解に基づいています。
まず、火力発電所の定格出力とは定められた条件で連続して発揮しうる最大能力の毎時間当たりの値のことです。環境*2や設備状況などにより多少上下動*3がありますが、この値で運転できるように設計・運用がなされています。
残念ながら火力発電所の出力データが公表されているところを見つけられなかったのですが、代わりに原子力発電所の出力データがあるところを紹介します。運転情報・実績データ - 原子力発電所の運転情報 | 電気事業連合会
その中の関西電力のものが見やすいと思いますが*4、出力のばらつき具合がわかるかと思います。火力発電所原子力発電所と原理は同じ蒸気機関であり、大きく変わりません。

連続運転時間については1年間で10〜11ヶ月連続運転しています。メンテナンスとして1年に一回業者の自主点検・2年ないしは4年に一回定期修理*5を行っており、平均すると1年に1〜2ヶ月程度が停止している時間になります。そのため火力発電所の年間を通しての最大稼働率はメンテナンス期間を除いた期間定格運転をしたとして8割前後となりますが、実際の稼働率は4〜5割程度と低くなっています*6。これは火力発電所がベース電源にもピーク対応もできる万能の電源のため負荷に合わせて発電量を増減しているためであり、火力発電所には供給余力があります。