放射能により孫にもたらされたもの

安全厨が相変わらずデマを流しているのには怒りを覚える。
東京新聞こちら特報部「健康被害3世代に」が大人気 - Togetter
まるで孫世代*1には影響がまったくないような物言いがなされているが、震災直後にはその点に言及している記事がもうすでにある。
記事自体がなくなっているので以下に転載する*2

チェルノブイリ原発事故:発生25年 放射線障害、孫の代まで

 ◇3キロから避難、苦しむ一族 因果関係調査なし

 旧ソ連ウクライナで86年に起きたチェルノブイリ原発事故は、発生から25年となる今も深い傷痕を残している。当時の周辺住民は今なお健康被害に苦しみ、事故との関連が認められず切り捨てられる例も多い。被ばくとの因果関係がきちんと解明されていないためだ。大気中に放出された放射性物質のレベルは大きく違うとはいえ、福島第1原発事故でも周辺住民への長期にわたる健康調査と配慮が求められる。【キエフで田中洋之】

 「(当時のソ連)政府は深刻な問題は起きないといっていた。それなのに……」

 ウクライナの首都キエフ北東部のデスニャンスキー地区にある自宅アパートで、ナジェージュダさん(56)は孫のイリヤ君(3)を抱きしめた。次女オリガさん(32)の三男イリヤ君は心臓弁膜症とダウン症に苦しむ。オリガさんは「こちらの話すことは理解しているのですが、言葉が出ないのです」と顔を曇らせた。

 25年前。ナジェージュダさんは、原発職員だった夫と娘2人と一緒に原発から約3キロ離れたプリピャチに住んでいた。原発労働者の町として建設され、当時の人口は約5万人。当時としては最先端の設備がそろい、自然も豊かで住みやすかったという。住民の平均年齢は26歳と若く、活気にあふれていた。

 事故は4月26日午前1時20分ごろ起きた。「深刻な事故とは知らされず屋内退避の指示もなかった。その日は土曜日で暖かく、子供たちは日中、外で遊んでいた」。住民に避難命令が出たのは翌27日。「(健康被害を抑える)ヨウ素剤も支給されなかった」とナジェージュダさんは振り返る。

 半年後に今のアパートに入ったが、しばらくして家族に健康被害が認められるようになった。別のアパートに暮らす長女レーシャさん(35)は6年前、甲状腺に異常が見つかり、手術で甲状腺を全摘出した。レーシャさんの3人の子供も病気がち。ナジェージュダさんとオリガさんも頭痛などの体調不良に悩まされてきた。

 オリガさんの長男(14)は妊娠6カ月の早産で、次男(10)もぜんそくを患う。イリヤ君は病気のため幼稚園から入園を拒否された。オリガさんは「小学校にはちゃんと通えるといいのですが」と話す。

 イリヤ君は病気と原発事故の関連が認定され、月に166フリブナ(約1700円)の手当を国から支給される。だが、ほかの5人の孫たちは事故と健康障害の関連が認定されず、プリピャチ出身者の子供向けの手当、月16フリブナ(約160円)しか受け取れない。被災者の医療支援を行っているウクライナの民間組織「チェルノブイリの医師たち」のニャーグ代表は「放射線と病気の因果関係の解明につながる統計や調査は、費用がかかることもあり行われていない」とウクライナ政府の対応を批判する。

 ナジェージュダさんが住む地区には約2万人のプリピャチ出身者がまとまって暮らす。元住民でつくる自助組織「ゼムリャキ(同郷人たち)」は互いのきずなをつなぎとめる文化活動を続ける一方、先天的な障害をもって生まれる子供たちを救済するプログラムをつくった。だが事故から25年が経過し、スポンサー探しは難しくなっているという。ゼムリャキ代表のクラシツカヤさん(55)は「次世代の子供たちに健康被害は広がっている。チェルノブイリの悲劇は決して終わっていないのです」と話した。
毎日新聞 2011年4月25日の記事より*3

このような現実を前になぜこんな風に根拠無しに東京新聞の記事*4をあざ笑っていられるのだろうか。

ほぼ同じ記事が中日新聞のWebサイト上にあったので紹介しておきます。

つなごう医療 中日メディカルサイト
原発事故でまき散らされた放射能汚染は、子どもらの健康をいかにむしばむのか。事故から26年後のチェルノブイリを視察した日本の作家やNPO法人が、現在進行形の被害や苦しみを相次いで報告している。福島の子どもらに、同じ悲劇を繰り返させてはならない。学ぶべきものとは。 (林啓太)
(略)
原発から南に約100キロ離れた首都キエフ郊外にウクライナ内分泌代謝研究所がある。面会した男性(34)は事故当時8歳で、20年以上もたってから甲状腺がんを発症した。

 テレシェンコ医師によると、事故時に18歳以下の人に施した甲状腺がんの手術は90年に64件を数えたが、「それが2010年に約700件に上った」と説明した。

 小児甲状腺がんは、飲食を通じて放射性ヨウ素を喉にある甲状腺に取り込み、細胞ががん化した病気だ。事故の4年後ぐらいから急増し、90年半ばをピークに減った。ところが当時の子どもが大人になった今、甲状腺がんを多発している。半減期が長いセシウムが蓄積されて被ばくしているとの報告書もある。

 小児甲状腺がんは国際的に原発事故との関連が認められている。中村さんは「後から発症する人も放射線との関連を疑うべきだ」と指摘する。

 日本ペンクラブの視察団はほかに、事故から約20年もたって生まれた子どもに、放射線の影響をうかがわせる障害があることを報告している。

 原発から西に約80キロのナロジチ市で、市民病院の近くに住むブラート君(8つ)。心臓や甲状腺に障害があり、生後4カ月をはじめに5回も手術を受けた。年の離れた2人の姉も甲状腺に障害がある。母親は事故時、10代後半だった。中村さんは「ほかにも筋肉まひや発達障害など、さまざまな病気に苦しむ子どもたちがいた」と話す。

足首や関節に 痛み訴える子

 同様の健康被害は、NPO法人「食品と暮らしの安全基金」(さいたま市)も現地で把握した。原発事故を経験した女性の孫の世代までを対象とした健康調査を今年2月に開始。5〜6月には、原発の半径約150キロの8つの村で、14家族の61人や小学生らに聞き取りした。

 放射線健康被害の研究は、がんや心臓病、白内障などの症例が知られているが、小若順一代表(62)は「幼児や児童らが足首や関節に痛みを抱えるケースも多いことが分かった」と明かす。

 原発から120キロほど西にあるモジャリ村。約20人の小学生に「脚が痛くなる人は」と聞くと半数近くが手を挙げた。膝、すねやくるぶしに痛みを感じると言い、痛む箇所を指さしたりさすったりしてみせたという。

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 原発から南東に140キロのエルコフツィー村では、エレーナ・モロシュタンさん(27)が「心臓が痛い」と話し、長女エフゲーニャちゃん(3つ)もくるぶしの痛みを訴えた。

 エレーナさんは放射能に汚染された場所に半年間、住んでいたことがあるが、エフゲーニャちゃんが生まれた同村は「非汚染地帯」とされる。小若さんは「子どもが関節に痛みを覚える以上、放射線の影響も想定せざるを得ない」と続ける。

2012/10/20追記
togetterで批判している斗ヶ沢記者にどう思っているのかを聞いてみた。

なおもう2週間たっているが返事はない*5。私の目には両者に本質的な違いがないように見えるが、斗ヶ沢記者は違うようだ。

*1:正確に言うと当時子供の世代の子

*2:当時のハテブはてなブックマーク - チェルノブイリ原発事故:発生25年 放射線障害、孫の代まで - 毎日jp(毎日新聞)

*3:強調は引用者による、togetterで批判している斗ヶ沢記者と同じ毎日新聞の記事だ。

*4:http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2012100102000123.html

*5:はてなtwitter記法のアイコン位置がひどすぎる気がする