海上護衛戦(大井 篤 / 学研M文庫)

第二次大戦時の日本軍の補給、通商保護軽視は有名な話であり、この本はその脆弱なリソースしかついに注がれなかった海上護衛戦について当時の海上護衛総司令部参謀をしていた人が書いた本。
その悲劇的な戦闘についてはこの本を読めばよいが、結局戦争の帰趨を決めたのはけっして日本とアメリカが最初から持っていた物量の差ではなく、組織の柔軟性、失敗に対する対応の差なのだろう。そのことを顕著に示していることとして、アメリカと日本の潜水艦隊の任務の変遷があるだろう。日本およびアメリカの潜水艦隊は艦隊決戦において敵主力艦の撃破をその任務としていたが、日本はそのまま戦中ずっと変わらなかったのに対して、アメリカの潜水艦隊はドイツの潜水艦隊のイギリスに対する戦果を見て、方針を転換し通商破壊に投入され、実際に大日本帝国の息の根を止めた。こういった柔軟性を最後まで持たなかったがゆえに日本は負けたのだといっても過言ではないのではないか。
そういった柔軟性の差は今のアメリカと日本の間にもあるのではなかろうか、その差が今の日本経済がそこにあり続けている理由なのかもしれない。
海上護衛戦