ないがしろにされる基礎 『「もう管制できない」ニアミス逆転有罪』

こんな記事があった。この裁判結果自体もひどいがブログとかの反応も基礎を置き去りにしたひどい記事が多い。
http://www.asahi.com/national/update/0411/TKY200804110284.html*1

 「危険は決して生じさせてはならない」――。01年に起きた日本航空機のニアミス事故訴訟で、東京高裁は管制官の職務上の義務を厳しく指摘し、管制官2人に有罪判決を言い渡した。様々な要因が絡む航空事故で、個人の刑事責任が認定されたことで、関係者に驚きと不安が広がった。

まずは簡単に基礎から、現在システムに対しての重大な事故が起きるとき、その背後には1の重大事故に対して30の軽事故、300のヒヤリハットがありその裏には数千の不安全行動・不安全状態があると*2言われている。つまり、プロだからミス*3を起こすことはあってはならないというのは、それまで不安全行動がさほどなければYesと言える。だが実際の現場の状況はどうだったか。では報道を見てみよう。

 今回の事故は、同省航空・鉄道事故調査委員会の報告書でも、システムの不備や運用の不徹底など複数の要因が指摘された。こうした状況を踏まえ、一審・東京地裁は、個人への刑事責任追及は「相当でない」としていた。
(略)
 管制交信ミスによるトラブルは最近も多発。ほとんどが「聞き間違い」や「誤解」だ。ベテランの事故調査官も「声だけに頼る交信に誤りはつきもの」と言う。国交省も「人間は間違える」ことを前提に、二重三重の安全策の構築に乗り出したところだった。

以前から不安全行動が多数あったことが見て取れる。工学的な視点から言えば、個別の単純ミスは蟻の一穴に過ぎず、事故の真因はこの不安全行動を引き起こす原因でありその原因こそが問われるべきと言える。
しかるに今回の裁判は蟻の一穴を問題視し、その前にある真因を無視しているから問題なのだ。今回の問題でお縄になるべきやつがいるとすれば、それはそういう問題を放置していたやつがお縄になるべきなのだ。
ついでに言えば医療と関係で話が違うんじゃないといっている人いるけれど、確立論的に多数の軽問題から重大問題が起こりえり、対策としては同様にヒヤリハット段階で早期発見・防止と同じ方法・考え方を使っている以上、話としては同様と言える。ゆえに医療崩壊という司法・裁判の医療の先行事例を見る限り、同様に管制が崩壊するのではないかというのは十分な信憑性を持っているといわざるおえない。

というわけでミスを問題にすることは前提条件が間違っていますよっと
2008-04-12
航空管制の問題と医療危機はちょっと違う問題だと思う。 - novtan別館

*1:以下引用はこの記事より

*2:注意これはあくまでもハインリッヒの法則と呼ばれる経験則です。

*3:このミスには所謂単純ミスを含む