常用発電と非常用と自家発

大飯原発が必要だったか試算してみた - アナログとデジタルの狭間でへの id:xevra のハテブコメント「良エントリ。そもそも揚水発電をちゃんと回すだけで電力は足りている事は事前から分かりきっていた事。また民間企業内の発電設備から電気を買う対策も加えたら電力は余りまくっている。いつまでも利権屋に騙されるな」から始まった電力足りてないと言っているのは利権屋だけ - Togetterで自家発についてとんちんかんな議論が展開されていたので突っ込んでみる。

RT @GeKiJouNOutA 先程も言いましたが、企業の自家発は同期が取れる等全て電力網に送電できるようになっているのですか?また何時間も運転できる物ばかりですか?
RT @PCengineerX では、電力網に対する技術的な問題ではないという論拠は?というか、電力網、送電系統の制御も含めて資料読んでますか?自家発電に対する法令と区分けでもこうなってますが?非常用発電機の設置基準
RT @PCengineerX ガスタービン発電機で自家発として導入されている物のかなりの部分で寿命時間が1000時間程度になります。それ以後は整備になりますが、それでも利権屋の暴論ですか?どうやってピークごとに使っていくんですか?始動ごとに余分に一時間は稼働時間分の寿命も削られます。*1

まとめるとこの二人が言っていることは

  1. 自家発6000万kWは系統と連系*2できない、非常用発電機だ。
  2. ガスタービン発電機は1000時間しか寿命が無く、整備が大変。

ということになる。しかしこれは最近のエネルギー関係の資料を追っていれば分かる事だがそんな事実は無い。
一つ目に付いてはエネルギー庁の出しているhttp://www.enecho.meti.go.jp/info/statistics/denryoku/result-2.htmの「5-(1)自家用発電所認可出力表」という統計によれば2012年3月末時点で5582万kWの設備容量があり、需給検証委員会報告書(案)によるとそれら自家発は常用であり系統に接続されていること、及びそれとは別に非常用自家発が2300万kWあることが書かれている。*3

二つ目に付いては当然1ヶ月程度しか持たない常用自家発なんてものは無いわけで、点検の基準は

電力安全規制の見直しの経緯
耐圧工作物(定期自主検査対象)であって、以下のいずれかに該当するものを特定耐圧工作物(定期検査対象)とする。
7.ガスタービンで累積運転時間10万時間を超えたもの
火力設備における電気事業法施行規則第94条の2第2項第1号に規定する定期自主検査の時期変更承認に係る審査基準及び申請方法等について
(3)小型ガスタービン
次のイからホまでのいずれかに該当するものにあっては、それぞれに掲げる時期又は前回の検査後6年を経過する時期のいずれか早い時期を限度として、検査の時期の延長を承認することができる。ただし、一回の承認による延長期間の限度は、最大3年とする。
イ 年間運転時間を6,000時間超とし、かつ、分解点検までの運転時間を30,000時間以上として設計、製作されているもので

といったように発電用のガスタービンの分解点検頻度は1万時間や10万時間運転周期となる。
常用の自家発が日本の発電量の2〜3割近くを占めるというのは、一般的な認識ではないかもしれないが、自家発は毎年増えており*4これからはさらに重要性が増していく存在なので正しい認識が普及してほしいものだ*5


*1:ところでだれかTwitterやTogetterの簡単な引用方法知りませんか?

*2:どこかで連携と書いている人がいたが用語としては連系が正しい。

*3:需給検証委員会の資料は基礎資料だと思っていたのだけれど、それさえ知らずに議論する人が案外いるようだ。

*4:去年一年で東北は200万kWも自家発が増えている!

*5:業界の隅にいる端くれとしては